俺がレーズン入りのパンを焼いて食べていると
ぶどうパンだね懐かしいねと母ちゃんが言いながらキッチンへ入ってきた。
レーズンパンだよ、と言うと
横目になって
「ぶどうパンですぅ!まったく近頃の若者はなんでもかんでも横文字なんだから」
そう言ってもう一枚残っていたパンをトースターへ入れ焼き始めた。
暫くすると、香ばしい× 焦げ臭い匂いが漂ってきた。
「アチッ!」
母ちゃんの裏声に、大丈夫?と言いかけた俺は途中で笑って咳き込んだ。
母ちゃんの目の前の皿に乗った、真っ黒な物体。
「これなに?」
って言ったら
「見りゃわかるだろ、黒パンだよ、ドイツの」
ぶどうパンどこいった!?
ドイツの黒パンってそんな色だったっけ?
レーズンもどこにあるか焦げに埋もれてわからなくなっちゃってるし…
そんなヘリクツの減らない母親との賑やかなおやつの時間。